香梅酒造

香梅酒造は、100年の歴史を持つとはいえ米沢市内では新しい酒蔵である。米沢市北部地域の米農家とのお付き合いの中、豪雪で厳しい冬季間の働く場所になっており、酒蔵と農家とともに守ってきた酒造りがここにある。米沢市で最も歴史を持つ白子神社や、南陽市の梨郷神社の御神酒にもなっており、市内各地域で御神事や冠婚での「乾杯」が香梅で行われることも少なくない。

香梅酒造

「香梅」梅が香る頃、春がやってくる

1月になると米沢の寒さと豪雪を利用した“寒仕込み”が行われる。香梅の酒の味は1月でしか作られない特別なものである。酒蔵では一年で最も忙しい時期を迎える。使用する米は秋に収穫されたばかりの山形県産米。新しく効率の良い麹室が主流になっている昨今に、創業以来変わらない昔ながらの室で自然調湿を経験の中で温度を見ながら麹が作られている。

「ほら、こんなにぽろぽろとした麹が出来上がるんだよ」と杜氏の香坂洋平さん。名のごとく「梅の花が咲く頃に出荷される香梅で、地域の皆様に春がきたことを伝えたい」とも。

冬に造って春一番に出荷される香梅は昔ながらの季節感を大事にして、春の縁起物としても周辺地域では親しまれている。

香梅酒造

雪と酒造りの調和 雪国ならではの仕込み蔵

米を蒸す際に一気に温度を下げる際に自然に積もった雪を使用しているという。水で冷やすよりも一気に冷えて香梅らしい麹作りには雪欠かせない。土壁の仕込み蔵にも、雪が積もることによって蔵内の温度が一定に保てるという。酒造りでは1〜2度の変化が味を左右する。この昔ながらの蔵が、その変化がわかりやすく火入れのタイミングが取りやすいという。雪が積もった蔵の中で、酒がゆっくりゆっくり寝かされつつ熟成されていく。

合わせて市内最大級のサーマルタンクを導入して、出荷前に酒の温度を完全に管理しているのも香梅の品質管理の特徴である。

こうして、うまみとキレある毎日でも飲みたくなる飲みやすい香梅のお酒の味が造られて保たれている。

香梅酒造

酒粕まで選ばれる 粕にすら他の酒蔵との違いがある

香梅の酒造りから出る酒粕は、通常の酒蔵と異なり粕歩合が非常に多い。「ツブツブも板粕もすごく人気なんです。これじゃなきゃダメだと言ってくれる方や業者さんが全国にいます」と杜氏。実際には、酒造りの効率と利益性高めるために、酒粕を残さない酒造りをしようと思えば可能ではあるのだが、昔ながらの酒造りと味を守っている香梅では昔同様この酒粕が大量に出る。非常に濃い酒粕だ。香りも良い。道の駅やお得意様の料亭などに出荷されて香梅の酒同様、香梅の酒粕でしか作れない粕漬け等の料理に選ばれている。

香梅酒造

G1山形認定 山形県の補助金を利用して新店舗を整備

【香梅】有機純米吟醸 良縁 は国税庁より認定された 地理的表示制度「G1山形」に選ばれた。県単位の日本酒の地理的表示では山形が唯一指定されている。香梅の酒が山形県の酒として認められ、品質保証がされている証である。
また、補助金等を利用して酒蔵前に自社店舗を構えて、直営店を始めたり、香梅の酒とあう料理を作る体験教室を企画して、日本酒の魅力を地域の人々に広める取り組みを始めている。味や伝統だけでなく、地域から日本酒に親しんでもらう文化をたやさない努力も行い始めている。

酒造りで大事にしていること

伝統と環境自然の季節感を大事にして酒造りをしている香梅。とにかくブレず、流行りを追うのではなく自分たちの酒とお客様と向き合っている姿がここにはあった。そんな酒を楽しんでくれるお客様なら、オーダーで作る酒造りにも応えていきたいと前向きだ。満足できる酒造りをプロとして挑戦しようとする気持ちが感じられた。そして、牧野洋酒店創業以来、直接仕入れさせていただいている酒蔵でもある。地元の酒屋とお付き合いも大事にしている地域の貴重な酒蔵である。

一人でも多くのお客様にこの酒蔵で作られる酒を味わっていただきたい。

(取材:牧野洋酒店・代表取締役 牧野淳一)

香坂酒造(香梅)

気温-10℃にもなる極寒の中「香梅」は仕込まれます。 『すべてを手造りで』にこだわる香梅は、仕込み米を素手で洗う作業から始まり、できあがったお酒に手でラベルを貼る作業まで、全て手作業で行っています。


香坂酒造株式会社

代表取締役・杜氏 香坂洋平
山形県米沢市中央七丁目三番十号
TEL:0238-23-3355
URL:https://kousaka-shuzo.com/
代表銘柄:香梅「雫」、香梅「良縁」

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